English
Home Service Tips About Resources Contact
Company
国際的役務提供取引にかかるEU VATの動向 2013年2月作成
 
 はじめに
 
 国際的に行われる無形資産の譲渡等や国際間の役務の提供など国際的な取引に関しては、消費税法上問題となることがあります。たとえば、外国法人が、日本法人に著作権等を譲渡等する場合には消費税は課されませんが、日本法人が国内で著作権等を譲渡する場合には消費税が課されます。また、外国法人が開発・製造した製品を日本法人に譲渡する場合において、販売機能そのものは外国法人に置き、その外国法人のために情報収集・広告宣伝等の付随機能のみを行う子会社を日本に設立する場合には、その子会社は、外国親会社にのみ役務の提供を行うこととなり、輸出免税が適用され、日本の消費税は課されないことになります。
同様な課税の公平の問題は、他国でも生じている可能性があり、本ページでは、ヨーロッパの付加価値税(VAT: Value Added Tax)が、役務提供取引に対してどのように課税しているかを概観します。
 
  EU VAT(詳細は、http://ec.europa.eu/taxation_customs/taxation/vat/how_vat_works/index_en.htmを参照)
 
 EU におけるVATは、資産に付加された価値や役務提供取引に課される一般消費税であり、域内における使用や消費のために譲渡等されるほとんどすべての資産や役務に課税されます。
EU VATにおける主たる法的根拠は、Directive 2006/112/ECと呼ばれるものです。これによれば、納税義務者は、事業として課税資産の譲渡や役務を提供する個人、法人等とされています。しかし、年間の売上高が一定額(国ごとに異なる)以下である場合には、VATの納税義務はありません。納税額は、売上に係るVATから、前段階で支払ったVATを控除した金額となります。課税事業者は、各国の課税庁に登録を行う必要があり、登録されるとVAT番号が付され、 顧客へのインボイスに、VATを表示しなければなりません。
EU法においては、税率の最低限度を15%と定め、また、一定項目に対する軽減税率の最低限度を5%と定めるのみであり、実際の税率は、加盟国において個々に決めています。また、国によっては、特別な分野に特別な規則を適用しています。
加盟国外への輸出については、VATは課されず、また、仕入税額控除を行うことができるため、いわゆるゼロ税率となっています。輸入については、加盟国のいずれかに資産が輸入された時にVATが課されます。
役務提供については、役務が提供された場所においてVATが課され、役務提供者が設立等された場所が課税地となることが多い状況となています。役務の種類によっては、設立等された場所以外で課税される場合があり、この例としては、不動産に関する役務提供、乗客や貨物の運送、文化・芸術・スポーツ・科学・教育・エンターテイメントに関する役務提供があります。
 
2010年における改正
(詳細は、http://ec.europa.eu/taxation_customs/taxation/vat/how_vat_works/vat_on_services/index_en.htm#supply_servicesを参照)
 
役務に関するVATについては、2010年1月1日以降に新たな規則が適用されるようになり、消費地国においてより適正に課税が行われるように修正されています(詳細は、Directive 2008/8/EC参照) 。より統一的な適用がはかられるように、これらの規則の一部については、実施規則により、明確化が図られています(詳細は、Implementing Regulation No. 282/2011を参照)。
課税が行われる場所は、役務が提供される場所が原則ですが、この原則は、提供を受ける役務の性質及び役務の提供を受ける顧客の種類により異なります。この、新たな規則においては、事業者として事業を行う課税事業者(B)と、課税事業者以外(最終消費者である個人(C))が明確に区別されており、事業者間の役務の提供(B2B)は、原則として、顧客の設立場所等において課税さますが、事業者から個人(B2C)に対する役務の提供については、役務提供者の設立場所等において課税されます。

B2Bの例:ブルガリアの法人からオーストリアに事業所を有する法人に会計業務を提供する場合には、オーストリアのVATが課されます。ブルガリア法人がオーストリアに事業所を有していない場合には、オーストリアの顧客がVATに関する処理を行います。この際のVATの処理は、リバース・チャージ と呼ばれる方法を使います(http://www.hmrc.gov.uk/manuals/vatpossmanual/vatposs14100.htmによれば、リバース・チャージ方式とは、通常は役務提供者が行うVATの処理を、役務の受領側、つまり顧客が行う方法です)。

B2Cの例:リスボンで設立された事業者がデンマークに居住する個人顧客に役務の提供を行う場合には、ポルトガルのVATが課されます。

消費地課税をより確実にするために、次の例外規定が設けられています。

B2C役務提供取引を中間業者が仲介する場合は、主たる取引が行われる場所で課税される。
例:フランスに別荘を有する個人がスウェーデンに所在する自宅に家具の移送を行う場合に、移送業者を探すために中間業者に依頼することが考えられます。VAT上、B2C加盟国間貨物輸送の課税地は、出発地とされていることから、中間業者の設立場所にかかわらず、フランスのVATが課されます。

B2BであってもB2Cであっても、不動産に係る役務の提供については、不動産が所在する場所において課税が行われます。
例:フランスに居住する建築家が、スペインに所在する別荘の設計を請け負った場合には、スペインのVATが課されます。

有形動産の評価または作業に関するB2C役務については、役務が物理的に行われた場所において課税されます。
例:イタリア人の芸術家が、個人が所有する絵画の火災による損傷を、イギリスで修復した場合には、イギリスで課税されます。

B2B及びB2Cによる乗客の輸送は、距離に応じて課税されます。
例:ドイツ経由でポーランドからフランスにバス旅行する場合は、それぞれの国における距離に応じ、ドイツ、ポーランド、フランスで課税されます。

加盟国間貨物輸送を除き、B2Cの貨物の輸送は、距離に応じ課税されます。
例:個人によるパリからマルセイユへの貨物の輸送は、輸送を行う業者がどこで設立されたかを問わず、フランスで課税されます。

B2C加盟国間貨物輸送については、出発地において課税されます。
例:ドイツから、フランスの個人顧客に発送される貨物については、輸送を行う業者の設立地や顧客の居住地にかかわらず、ドイツで課税されます。

荷物の積み下ろしなど、貨物の輸送に付随するB2Cの役務提供については、役務が物理的に行われる加盟国において課税されます。
例:個人顧客に対し、ロッテルダムで貨物を降ろす作業を行うデンマークの会社は、オランダで課税されます。

文化・芸術・スポーツ・科学・教育・エンターテイメント・同様なイベントの入場に関するB2Bの役務提供については、イベントが実際に行われる場所において課税されます。
例:アイルランドの会社が、事業目的で、ベローナで行われるオペラに入場するための支払いをしたときは、イタリアで課税される。これは、チケットをオンラインで購入した場合でも、チケット・ブースで購入した場合でも同じです。

文化・芸術・スポーツ・教育・科学・エンターテイメント・同様なイベントに関するB2Cの役務提供については、アクティビティが実際に行われる場所において課税されます。
例:アントワープに居住する学生が、ヘーグにあるビジネス・スクールのマネージメント・コースを受講するための授業料は、オランダで課税されます。

B2B及びB2Cのレストラン及びケータリングについては、EU内の航空機内等を除き、役務が物理的に行われる場所において課税されます。
例:パリのレストランで食事をする個人顧客は、フランスで課税されます。

B2B及びB2Cの、短期間の移動手段の賃貸は、移動手段が実際に引き渡される場所において課税されます。
例:ベルギー人がリガ空港で2週間レンタカーを借りる場合には、出張であろうと休暇であろうとラトビアで課税されます。

電子的に提供されるB2Cの役務提供で、第三国に設立された役務提供者から、EUの納税義務者以外の者に対して行われるものについては、顧客が居住している場所又は恒久的住所を有する場所において課税されます。
例:スウェーデンに居住する個人が、日本のオンライン・ライブラリーを利用する場合、日本の会社が課金する金額に加え、スウェーデンで課税されます。

ラジオ及びテレビ放送並びに通信サービスで、第三国に設立された役務提供者から、EUの納税義務者以外の者に対して行われるB2Cの役務提供については、顧客がそのサービスを実質的に利用し享受する場所において課税されます。
例:フランス人が、スイス・テレコムを利用して携帯電話をフランスで使用する場合には、フランスで課税されます。

広告、コンサルティング、法的サービス、金融サービス、通信、放送、電子的役務の提供などのB2Cサービスは、顧客がEU以外に住所を有する場合には、住所地において課税されます。
例:ハンガリーの会社がウィルス対策ソフトを、オーストラリアに居住する個人にダウンロード販売するときは、ハンガリーでは課税されない。

実質的利用・享受の場所等が、上記の規則により定められる課税地と異なる場合には、加盟国は、一定の場合には、二重課税・無課税・競争の歪みを防ぐため、課税地を変更することができます。
例:ノルウェーの会社がアメリカの会社の広告を行う場合、通常は顧客の設立国で課税され、EU VATは課されません。しかし、広告に使われる媒体が加盟国にある場合には、実質的利用・享受の原則により、VATを課すことができます。

上記以外にも、次の改正が予定されています。

2013年1月1日以降における、B2Cの長期移動手段賃貸契約は、一定のものを除き、個人顧客の住所地、恒久的住所を有する場所又は通常居住する場所において課税されます。

2015年1月1日以降におけるB2Cの通信、放送、電子的役務提供サービスは、個人顧客の住所地、恒久的住所を有する場所、又は通所居住する場所において課税されます。 
免責事項
Copyright(C) 2009 - 2013 JITACS All Rights Reserved.